そんなわけで二学期が始まって以来、ろくでもないことばかりに見舞われている。
「明日見、アイス買ってきてヨ!」
 手ぶらで前を歩くエリナが、コンビニをみつけていう。
 エリナは駅前だと数百メートルごとにある、このコンビニという形態の小売り店舗をひどく気に入ったようだった。
「自分で好きな味を選んでこいよ」
「そうだナ……。うん、そうする!」
「待ちなさいっ!」
 文面通りなら鋭い言葉となるのだろうが、裏返った素っ頓狂な声が聞こえた。

挿絵04(改訂)

 
 振り返ると、桐谷さんが後ろからついてきていた。
「あ、あ、明日見くんをこれ以上――」
 桐谷さんは、真っ赤になって何か言いかけたけど。その声はエリナに遮られた。
「おー。桐谷じゃないかヨ」
 エリナは何を勘違いしたのか、桐谷さんに抱きつく。
「遊びに来てくれるのカ?」
「ひゃっ!」
 巨乳を顔に押しつけられた桐谷さんが悲鳴をあげた。
「何して遊ぼうかナ……?」
「な、ナニをして遊ぶ……。ですってー!?」
 桐谷さん、顔を真っ赤にしている。あと、鼻血少々。
「違う違う。たぶん、桐谷さんの考えていることは起こらないから」
 俺はちゃんと訂正した。
 だけど、桐谷さんは聞こえていないようだ。
「だ、ダメだよ。女の子同士でなんて……!」
「ワタシと遊ぶんじゃダメか? なら、明日見も入れて三人で遊ぼうヨ」
「あ、明日見くんが入れて三人で――!?」
 ぶはっ。と、桐谷さんは鼻血を吹いて倒れた。
 何を想像していたのかは、見当がつくので深入りはしない。
「お、おいおい。ダイジョウブか?」
 エリナは、天を仰ぐ桐谷さんを抱えてグラグラ揺すっている。
「どうする?」
「仕方ないよ。こういうときの桐谷さんって、しばらくは気絶したままだから。……連れて帰ろう」
 俺は持たされていたエリナのカバンを突き返して、桐谷さんを背負った。
 エリナのもすごいけど、桐谷さんも負けず劣らずでかい。
「明日見、顔赤いゾ」
「夕陽のせいだから」